【まずはここから】開業届、出すほうがいい?
はじめに
起業を考えるにあたり、「開業届って出した方がいいの?」「どんないいことがあるの?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。この記事では、開業届を出すことのメリットとデメリットを、できるだけ分かりやすくお伝えします。
子育て中のママさんや、副業から始める方、本格的にビジネスを展開したい方など、様々な立場の方に役立つ情報をご紹介します。
開業届って何?
開業届は、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」と言います。これは「私、お店(ビジネス)始めました!」と税務署に知らせるための書類です。
実は、開業届を出さなくても罰則はありません。法律上、必ず出さなければいけないものではないんです。でも、出すことで様々な良いことがあります。
出す時期は、お店やビジネスを始めてから1ヶ月以内が理想的です。特に税金の優遇(後で詳しく説明します)を受けたい場合は、開業した年の3月15日までに出す必要があります。

開業届は税務署の窓口でもらえますし、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。
書き方が分からない場合は、税務署の窓口で親切に教えてもらえますよ。
開業届を出すといいこと
税金が安くなる可能性が高い!
開業届を出すと、「青色申告」という税金の申告方法が選べるようになります。青色申告は少し手間がかかりますが、とてもお得な制度です。
最大65万円も所得から引ける!
青色申告の一番のお得ポイントは、最大65万円の「特別控除」が受けられること。これは簡単に言うと、「あなたの稼いだお金から65万円を差し引いてから税金を計算してあげますよ」という制度です。

例えば、ハンドメイドアクセサリーを作って売るお仕事を始めたとします。
1年間の売上げ:100万円
材料費や送料などの経費:50万円
利益(所得):50万円
通常なら、この50万円に税金がかかります。でも青色申告なら、この50万円からさらに65万円を引けるので、計算上はマイナス15万円になります。つまり、この年の所得税はゼロ円になります。
お店が赤字でも安心!3年間繰り越せる
お店やビジネスを始めたばかりの頃は、設備投資や宣伝費などでお金がかかり、赤字になることも珍しくありません。青色申告では、その赤字を最長3年間繰り越して、将来の黒字と相殺できます。

例えば、小さなカフェを開いたとして
1年目:改装費や機械の購入などで20万円の赤字
2年目:お客さんが増えて30万円の黒字
この場合、青色申告をしていれば、2年目の30万円から1年目の赤字20万円を差し引いた10万円分だけに税金がかかります。これにより、手元に残るお金が増え、お店の運営が楽になりますね。
ただし、青色申告の特典を受けるには、開業届と一緒に「青色申告承認申請書」も出す必要があります。開業した年に青色申告をしたい場合は、開業から2ヶ月以内か、その年の3月15日のどちらか早い日までに申請しましょう。
また、65万円の控除を受けるためには、複式簿記という少し複雑な帳簿のつけ方と、電子申告(e-Tax)が必要です。でも、最近は使いやすい会計ソフトがたくさんあるので、パソコンやスマホが苦手な方でも大丈夫。会計ソフトを使えば、簡単に複式簿記の記帳ができますよ。
お店の名前(屋号)付きの銀行口座が作れる
開業届を出すと、「〇〇カフェ 山田花子」のような、お店の名前(屋号)付きの銀行口座が作れるようになります。これは見た目だけの問題ではなく、実際のビジネスでとても役立ちます。
お客さんや取引先からの信頼アップ
お客さんや取引先に振込先を伝えるとき、個人名だけの口座より、お店の名前が入った口座の方が断然プロっぽく見えます。「この人、ちゃんとしたお店をやっているんだな」という印象を与えられます。
特に法人のお客さんと取引する場合、個人口座ではなくビジネス用の口座を求められることもあります。
お金の管理がラクになる
家計とビジネスのお金を同じ口座で管理していると、「このお金はどっちだっけ?」と混乱することがあります。特に確定申告の時期になると、1年分の収支を整理するのが大変です。
お店専用の口座があれば
- お店の売上げとプライベートのお金が混ざらない
- お店の収支が一目で分かる
- 確定申告の時に経費の計算がラクになる
最近は、スマホで簡単に使える会計アプリもたくさんあります。こういったアプリと銀行口座を連携させれば、日々の記帳作業も大幅に省力化できますよ。
「ちゃんとした事業主です」という証明になる
開業届は、あなたが正式な個人事業主として活動していることを証明する公的な書類になります。これは意外と様々な場面で役立ちます。
住宅ローンを組むときに役立つ
将来、家を買いたいと思ったとき、銀行は「安定した収入があるか」をとても重視します。会社員なら給料明細がその証明になりますが、個人事業主の場合は開業届や確定申告書がその役割を果たします。
特にビジネスを始めたばかりの頃は、実績がまだ少ないため、開業届があることで「この人はちゃんとした計画を持ってビジネスをしている」という印象を与えられます。
保育園の入園申請にも使える
子育て中にビジネスを始める方にとって、保育園は大きな味方です。保育園の入園申請では「働いている証明」が必要になりますが、開業届はその証明として使えることが多いです。
「自分の好きな時間に働ける」という個人事業主の魅力を活かしながら、子育てとビジネスを両立させるための強い味方になります。

ただし、自治体によっては開業届だけでなく、収入証明などの追加書類が必要な場合もあります。事前に各自治体の窓口で確認しておくと安心です。
社会的な信用が得られる
名刺に堂々と屋号を載せて、「私はこのビジネスの経営者です」と言えることは、大きな自信につながります。開業届を出すことで、「趣味でやっている」のではなく「真剣にビジネスとして取り組んでいる」という姿勢を示せます。

この社会的な信用は、新しいお客さんを獲得したり、良い取引先と出会ったりする上で、目に見えない大きな力になります。
開業届を出す時に気をつけること
開業届にはたくさんのメリットがありますが、いくつか注意点もあります。事前に知っておくことで、後から「こんなはずじゃなかった」とならないよう、しっかり準備しましょう。
保険の扱いが変わる可能性がある
開業届を出すことで、雇用保険(失業保険)や健康保険に影響が出ることがあります。
失業保険がもらえなくなることも
会社を辞めて個人事業を始める場合、失業保険をもらいながら準備を進めたいと考える方も多いでしょう。しかし、開業届を出すと、ハローワークでは「就職した」と見なされ、失業保険が受け取れなくなる可能性があります。
もし失業保険を受け取りながら事業の準備をしたい場合は、次のような対応を検討してみましょう:
- 失業保険の受給期間中は開業届の提出を少し待つ
- ハローワークの「再就職手当」などの制度を活用する
具体的にどうするのが最適かは、個人の状況によって異なります。不安な場合は、ハローワークで相談してみるといいでしょう。
健康保険の扶養から外れることも
配偶者の健康保険の扶養に入っている場合、開業届を出したからといって自動的に扶養から外れるわけではありません。しかし、収入が一定額(年間130万円程度、保険によって異なります)を超えると、扶養から外れる可能性があります。
扶養から外れると、国民健康保険に加入する必要があり、保険料の負担が増えることがあります。事前に、加入している健康保険組合に確認してみるとよいでしょう。
業種によっては、個人事業主向けの「国民健康保険組合」に加入できる場合もあります。一般の国民健康保険より条件が良いことがあるので、調べてみる価値はあります。
確定申告が必要になる
開業届を出すと、原則として確定申告が必要になります。確定申告は、1年間の収入と支出をまとめて、税金を計算する手続きです。
初めての確定申告は不安かもしれませんが、次のような方法で乗り切りましょう:
- 日々の売上げや経費の領収書をきちんと保管する
- 家計とビジネスのお金を分けて管理する
- 税務署が開催する無料の確定申告セミナーに参加する
- 使いやすい会計ソフトを活用する
確定申告は面倒に感じるかもしれませんが、自分のビジネスの健康状態を確認する良い機会でもあります。「今年はどれくらい稼げたのか」「どんな経費がかかったのか」を振り返ることで、来年の事業計画に活かせます。
まとめ:開業届は出した方がお得!
開業届のメリットとデメリットを比べてみると、私はメリットの方が大きいと思います。
メリット
- 青色申告で最大65万円の控除が受けられる
- 赤字を最大3年間繰り越せる
- お店の名前付きの銀行口座が作れる
- 住宅ローンや保育園入園の際の証明になる
- 社会的な信用が得られる
気をつけること
- 失業保険や健康保険の扱いが変わる可能性がある
- 確定申告が必要になる
特に本格的にビジネスを続けていきたい方は、できるだけ早く開業届を出すことをおすすめします。青色申告の特典を受けるためには、開業した年の3月15日までに申請が必要です。
収入がまだ少なくても、将来的にビジネスを大きくしたいと考えているなら、早めに開業届を出しておくと安心です。特に青色申告の特典は、ビジネスが軌道に乗るまでの大きな助けになります。
開業届の書き方や提出方法に不安がある場合は、お近くの税務署に相談してみましょう。意外と親切に教えてくれますよ。また、同じような事業を始めた先輩に相談するのも良い方法です。

開業届の提出は、あなたのビジネスを「本物」にする第一歩です。自信を持って、一歩を踏み出してみましょう!

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